転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2014年7月~9月 
2014.06.08

MBA、グローバル人材、イノベーション人材の求人が過去最多

日本経済は大きな転換期にありグローバル市場において競争が激化しております。特に日本企業ではリーダーを長期間かけて育てる余裕はなく、即戦力となる人材を外部から求める動きが顕著に見られます。

資生堂は日本コカ・コーラで社長や会長を務めた魚谷雅彦氏を社長に迎えましたし、武田薬品工業はフランス人(クリストファー・ウェバー氏)を経営トップに迎え、藤森義明氏が米ゼネラル・エレクトリックからLIXILグループ社長に転じました。これらの動きを見てもわかるように、グローバルなビジネスリーダー像にも単なる英語が出来る海外要員とは異なり、世界に対して発言し、コミュニケーションにより変化や影響を与える共感型のリーダーが求められてきました。

一方、外資系企業でも、日本のローカル採用にとどまらない、アジアパシフィック全体を見据えるポジションでの求人が始まっています。グローバル人材のニーズは、外資系/日系企業に関わらず、増えているのです。MBA Candidate(卒業見込み者)あるいはMBA Holder(既卒者)を対象とした求人も2012年後半から増加し、特にこの半年はさらに急増しています。

また、ベンチャー企業はもちろん、大手製造業であっても、M”Aによる事業統合や新規事業への進出、あるいは自らの業態変革等を通じ、イノベーションに挑戦する企業が増えてきました。

このような背景に伴い、アクシアムでは「MBA」、「グローバル人材」、「イノベーション人材」に関する求人は過去最高の受託数、上昇率(前年比)となっています。

求人が多すぎて、候補者が「選ぶ」局面が多くなり始めました。 これまで本コラムではどちらかというと市場の動向やそれに伴う求人情報についてコメントしてきましたが、今回はCandidate(求職者)に光を当ててみてみましょう。

1.Candidateは「将来性+報酬」で選ぶ

「即戦力」とよばれる候補者の皆さんが「やりたい」と思える求人は、「将来性+報酬(キャシュやオプションの合計)が備わったもの」となる傾向で、どちらの要素も意思決定に欠かせません。将来性があれば現職の報酬が2000万円の方が500万円に下がっても展職されるケースはあります。「企業の将来性、企業で得られる経験こそが自分にとって将来的に価値がある」と理解できれば報酬金額だけでは判断しないのです。

とはいえ、高額の報酬提示は意思決定に著しく有効であるのも事実で、入社後のモチベーション維持にも重要な要素になっています。

2. ハイエンドなCandidateの年収と経歴

ハイエンドな労働市場の領域でも、即戦力人材の報酬レンジは高くなってきたように思われます。現在の相談者の方々の相場としてハイエンドな即戦力人材の典型的な現年収レンジをご理解いただくためサンプリングしてみました。

業界や業態が変わればもちろん報酬制度も変わりますので、そのために年収が下がっても転職する方がいることは記しておきます。下記のような方々も、必ずしもそれ以上の年収でないと転職しないということではありません。

下記のような方々を採用したい、詳細を聞きたいと思われる求人者様がおられましたら、ぜひご一報ください。

学歴 語学力 業種職種 年齢 年収
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 戦略コンサルティングファーム
新規事業戦略 M&A戦略立案実行
現在
30代
約2000万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 日系ベンチャー企業 COO 現在
30代
約1800万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 戦略コンサルティングファーム マネージャー 現在
30代
約1800万円
国内有名大学院
工学修士
日英バイリンガル 戦略コンサルティングファーム パートナー 現在
40代
約5000万円
米国有名大学院MS in Computer Science 日英中国語トライリンガル IT産業 商品開発 現在
30代
約1200万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 日系メーカー 海外事業部長(子会社CFO) 現在
40代
約1800万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル プライベートエクイティー パートナー 現在
40代
約1800万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル ベンチャー企業 社長 現在
40代
約2000万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 日系商社 事業部長(子会社社長) 現在
40代
約1800万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 日系企業 海外事業開発執行役員 現在
50代
約1200万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 再生企業 社長 現在
50代
約2000万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 日系企業 投資銀行部門 現在
30代
約1400万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 外資系企業 COO 現在
40代
約2500万円
米国有名大学院MBA 日英バイリンガル 外資系ベンチャー COO 現在
30代
約1600万円
国内有名大学院MBA 日英バイリンガル 戦略コンサルティングファーム マネージャー 現在
30代
約1400万円
国内有名大学
BA
日英バイリンガル 日系企業 新規事業開発 マネージャー 現在
30代
約800万円
国内有名大学
BA
日英可能 日系企業 経営企画管理 現在
30代
約900万円
国内有名大学
BA
日本語のみ 日系企業 経営企画管理 現在
40代
約1400万円

等などです。

3.業界選びではなく「持続可能な会社」を見極める

候補者の皆さんから、これからどんな業界が伸びるのかという質問をよく頂きますが、IT産業、ヘルスケア、コンテンツ、外食、製造業、商社、金融など業界は多岐に渡り求人があります。しかしながら、業界でキャリアを考える時代は終わっており、「持続可能な経営が行われている会社」という視点で選んで頂きたいものです。「持続可能な経営」を実践している企業はどの業界にも存在します。

大手企業でもベンチャー企業でも、その時代のブームや短期の視点で選ばないようにして頂きたいと切に思います。皆が行きたい会社ではなく、「自分なら成功を収められる」というリスクを見極めてその機会を選んだ方こそが、持続可能な貢献を実現化し、結果、ご自身のキャリアが「持続可能」となります。

専門機関、メディア、評論家、アナリストなどの情報は重要な指針ですが、本当に自分の目でみないと、何事も戦略的な未来の情報は掴めない時代になったと思います。

「売り手市場」であるがゆえに、賢明な選択が必要と言えます。

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)