転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2012年7月~9月 
2012.07.05

内省的と反内省的 二極化する若者マインド

求人件数は増加傾向にあり堅調です。業界にかかわらず、積極的な求人を行っている企業はあります。その企業の求人を見ていると、日本の国益を守ることとグローバル化は対立した考えでないことが良く分かる、そんな印象をもつ求人が多くなっています。グローバル化は単なるアメリカ化でもなければ、単なる海外進出でもなくなっています。

積極求人している企業の特徴を述べます。

  1. 海外から見て失われつつある、日本人の顔、日本企業のプレゼンスを取り戻すような、情報発信型の企業である
  2. 35歳以上の管理職ポジションを社外から採用するような、成長スピードがあり内部人材育成が間に合わない
  3. 経営陣がグローバル化にコミットし、国籍にかかわらない人材登用を開始している

外資系か日系か、ベンチャーか大企業か、そんな枠組みで企業をとらえることができなくなっているように思われます。業界も、ネットビジネス、アパレル、食品、バイオ、リテール、ハイテク、部材メーカーなど様々です。

また最近、人材の側で強く感じるのは、「35歳以下の方のマインドの二極化」です。

一つの極には、世界規模で日本の課題を考えるべき、長期の視点が不可欠である、海外、価値観の異なる人達との対話とネットワークを希望する、と言った考え方や価値観をもった若者のマインド。

対極には、日本国内に沢山の課題や問題があり、今すぐ現実的に対応しなければならない、日本語の情報だけでも処理できないほどで大変で、調和、ネットワークこそが大事だと思う若者のマインド。

2つの極は、どちらも日本の問題に根差しているものの、シンプルにいえば、内省的になっているか、反内省的なのか、ということになります。どちらにも引っ張られているように思われます。

もちろん無関心な人達も世の中には沢山いるのでしょう。著者が接するのはキャリアの相談や転職活動の相談をしている人達なので、きっと、無関心な人は転職相談にも来ないため、その人達のマインドは分からないだけなのかもしれません。

筆者は、世界規模で日本の課題を考える1つ目の極に引っ張られている若者が、戦後50年程度続いてきたアメリカ化や海外都市圏先進国志向と異なるものに思います。どちらかと言えば、海外新興国志向のグローバル化が進んでいるように思います。

余談になりますが、日本語には、「内省的」という単語がありますが、この反対語が存在しません。今まで日本社会は長い歴史の中で、言葉としても「反内省的」という単語、概念を必要としなかったのでしょう。

私は、日本人の若者の中から、この「反内省的」人材が生まれる時代、構造に、やっとなってきた気がします。今までと異なる日本人気質、概念、を備えた世代になってくれる気がします。またそのような気質をもった若者に対して、社会は、機会を与えるべきと思っています。

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)