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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2010年1月~3月 2010.01.07
果断。行動が未来を創る。
いよいよ2010年が始まりました。皆様の年始の抱負は、きっとこの1年だけのものではなく、ここからはじまる5年の抱負であるのではないでしょうか。
昨年末には、日本政府による新たな経済成長戦略も打ち出されました。ご存じの通りその重点項目は、【環境】、【健康】、【アジア】、【観光・地域活性化】、【科学技術】、【雇用・人材】の6分野ですが、そこには、今までの姿とはまた違う、「新しい日本」がおぼろげながら見えてきたようにも思います。 その新しい姿へ向けて、われわれ自身が変化し、そして行動していくことが重要です。不透明なのは承知の上、それでも明日を予測して計画を実行に移すこと。
「果断」の年の始まりです。
2007年からの3年間は日本の雇用環境にとって厳しい出来事ばかりが起きてきました。四半期毎でお届けしている「転職市場の明日をよめ」を読み返しつつ振り返って見ても、特に2009年前半は求人数が半減するなど、地殻変動が起きました。
しかし、2010年には流れが変わり、求人もプラスに転じるでしょう。すでにインテリジェンスリーダー、ビジネスリーダーをはじめ多くの人が語りはじめているとおり、環境や社会のルール、経済について「地球規模での未来」が強く意識されるようになっていますが、キャリアという点でも、社会の変化とともに新たな機会、様々なニーズが生まれてくるものと期待しています。
人は誰でも、順調な時や豊かな時、幸福な時には未来について考えることも不安を感じることも少ないものですが、困難や不幸、貧困に直面すると、不安と闘うためにも将来を考え、未来を信じたくなるものです。それは当然のことであり、そうすべきだと思います。 ただ重要なのは、どんな未来を信じてどんな未来を築きたいか、そのビジョンを描くにとどまらず、それを計画に落として行動することです。行動の結果、思ったようになることもあれば思ったようにならないこともあるでしょう。それでも臆せず、とにかく行動に移すことが困難を乗り切る唯一の手段だと思います。
行動を起こせば必ず反応が起こり、また新しいものも見えてきます。それがまた未来を信じる気持につながり、さらなる行動をいざない、そして道が開けてくるのです。
ここで、もう一度昨年を振り返ってみます。
2009年は、失業した方のみならず、転職を希望した方、自ら退職した方、MBAを取得した方、大学・大学院の新卒の方など、すべての就職活動をする方々にとって職を得ることが容易ではなく、苦労をされた年でした。半年以上も仕事がない状態が続いた方も多く、そして就職先がきまらないまま年を越えてしまわれた方もいらっしゃると思います。
このような状況下でさらに筆者が懸念するのが、「高いレベルでの職業経験、スキルをお持ちの方、これまでも高報酬を得られてきたような極めて優秀な方でさえ、次の仕事が見つからない」という、かつてない事態に陥っているということです。
前々回の「転職市場の明日をよめ」でも書きましたが、98年の山一の破たんやその後の金融業界の再編など、破綻や統合の末に大企業から転職しなくてはならない人が市場に放り出された時とは問題の本質が異なります。10年前は、優秀な人材があぶれるということはありませんでした。
それまで「良いキャリア=日本の一流企業・大企業への就職」もしくは「一部の外資系企業への転職による年収アップ」という単純な構図でしたが、産業社会の変化に後押しされる形で「強いキャリア=戦略コンサルタントや金融のプロ、あるいは外資系企業の専門職やベンチャー企業の経営などスキルが身につくキャリア」という考えが広がり、またそこでの優秀な人材へのニーズは拡大を続けていました。
そして日本の終身雇用の神話が崩れつつある今、個々人が会社を頼らず自分でキャリアを考え、キャリア形成のために学習し、資格をとり、キャリア(会社&職業)を選択するのは当たり前になりつつあります。 10年前から大きく進化したと言えるでしょう。
多くの賢明な諸氏は、1.求人市場の現実を見て(「やってくれ」と言われるニーズを知り)、2. 自分の力を客観的にとらえ(「やれる」ことを理解し)、3.キャリアビジョンをもつ(「やりたいことを探す」)ことをすでにされているはずです。 それで十分、良いキャリアになりえました。
しかしながら、2009年はこのような行動をしてきた方でさえも苦境に立たされてしまったのです。 「個人のキャリア形成」が、10年かけてやっと社会の変化に対応したと思ったら、社会はさらに劇的に変化してしまったと言えるかもしれません。
では、これからの5年間は具体的にどうすればいいのか?
必要なのは、上記の3つに加え「未来について考えること」でしょう。現代社会が直面している課題と同じく、未来へ向けて「持続可能なキャリアの開発」を考える必要が出てきたのだと思います。
貴方に仕事を与えてくれる上司は、10年後も20年後も上司のままであることはないでしょう。貴方に仕事を依頼してくれる顧客も、同様です。今の需要すなわち求人ニーズは、またすぐに変わってしまうかもしれません。これまでも、ブームと呼ぶべき「キャリアの流行り」はありました。その流行りに乗った方は、ブームが去った後はそれでも何とかなってきましたが、これからはそうはいかないでしょう。そうした短期的、近視眼的な考え方ではすぐにキャリアが行き詰まってしまうことが鮮明になってしまったのです。
「今」はすぐに「昔」になってしまうことを強く意識し、将来にわたり「やってくれ」と言われるようなキャリア、将来も「やりたい」と思い続けられるキャリアを考えていくことが求められ始めたといえます。
そのために、いくつか重要だと思うことがいくつかあります。あえて、良い例と悪い例を対比してみます。
良い例 悪い例 「やりたいことが一貫している」 「やりたいことがころころ変わる」 「困難があってもやり遂げる」 「こんなはずじゃなかったと思う」 「リスクへの投資」 「資産の切り売り」 「成長と学習」 「現状維持」 「変化への対応」 「過去への固執」 「柔軟」 「頑固」
特別目新しいことではないですが、これらを同時に行うのは決して容易ではありません。 ともすると、状況の変化で「やりたい」と思う気持は変わってしまいますし、上手くいかないときは他人のせいにしたくなりますし、せっかく築きあげた居心地の良い場所を捨てるのは惜しいですし、過去の成功体験にもこだわってしまったり自分と同じ価値観を持つ人としか付き合わなかったりもしがちです。 また、環境の変化には柔軟に対応し、自分の志は貫くというのも至難の業です。
それでも、社会がさらに変化しつつある今、我々もさらに進化しなくてはなりません。 社会の変化とともにこれから新しく生まれてくる様々な機会、ニーズに目を向け、環境変化に対応した人がこれからの時代をリードすることになると考えます。
そして、その「進化」のために今必要となるのは「行動」です。
状況の分析はもう十分でしょう。景気の回復をただ待つことも、もはや有益であるとは言えません。 2010年に最も必要なのは「果断」であり、思いきってどんどん行動していくことです。 これまでの常識や成功体験にとらわれず、住み慣れた土地を飛び出していく勇気を持つこと。 転職するにしても現職を続けるにしても、それは同じだと思います。
そして転職を考えるなら、キャリアにおいての顧客となる「求人者」にたくさん会い、いろいろな話をしていくことです。「海外にかかわる仕事がしたい」とか「いつか投資の仕事をしたい」とか、「きっとMBAが役に立つから留学しよう」などと頭で考えるだけでは不十分です。貴方の未来のキャリア、将来にわたり貴方が情熱を傾けることができるキャリアは、頭の中では見つかりません。想像や推察で現実離れしてしまったり、ましてや妄想となってしまったりすることのないように、リアルな求人者と多く会っていただきたいと思います。「やり続けたい」と思えるようなこととの思いがけない出会いがあるかもしれません。
2010年に求められるのは、未来を考え、変化を予測し、すばやく対応すること。そのために、行動すること。 行動を起こせば、新しいものが見えてきます。そして、それがまた未来を信じる気持につながり、さらなる行動をいざない、道が開けてくるのです。
最後に、筆者の好きなミュージシャンの一人であるStingのコメントを紹介します。
「ポップミュージシャンとしての私の役割は、自分が興味をもっていることを楽しみながら探求し続けることです。それから、単純に観客から求めていることを純粋に提供することです。その中で、時には複雑なハーモニーやフラット5で楽しませることができれば、最高ですね。」
(ナショナル ジオグラフィック チャンネル/MR.MUSIC BRAINの番組内取材でStingが述べたミュージシャンとしての職業観)
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)