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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2007年 7月~9月 2007.07.26
碩学の書に学べ
「高等教育を受けているほど、企業家的なキャリアを選び、厳しい学習に挑戦してゆかなければならない。特に医師、冶金専門家、化学者、会計士、弁護士、教師、経営者は、今後十五年間において習得し、実際に使っていくスキル、知識、道具は、今日彼らがもっているものとはまったく違うものになっていることを前提とする必要がある。それどころか、わずか十五年後でさえ、自分がまったく新しいことを行い、まったく新しい目的をもち、多くの場合まったく新しいキャリアを進んでいるかも知れないことを想定しておいたほうがよい。そのために必要な継続学習やそのための方向づけの責任を負うことができるのは、自分しかいない。そのとき、伝統、慣例、方針は、助けになるどころか障害になるだけである。」※注1
こう述べたのは、ピーター・F・ドラッカーである。氏は1950年代半ばからニューヨーク大学ビジネススクールの夜間セミナーで約二年間にわたって講義を行い、そのエッセンスを1985年、『Innovation and Entrepreneurship』(日本語版タイトルは「イノベーションと企業家精神」)としてまとめた。
講義が行われてから約50年、上梓されてから約20年。
まさに氏が企業家精神は経済の世界に留まるものではないと定義したとおり、社会の中で個人がどのように人生、そしてキャリアを歩んでゆくべきかを考える際にも、大いに学ぶことができ、その嚆矢ともいえる書である。
筆者が多くの方々のキャリア相談を通じて感じるのは、新しいキャリアを自ら方向付ける責任、言い換えれば自ら決める権利をもっているはずであるのに、その責任(権利)のなんたるかを認識していないことである。そして、その責任(権利)を行使するにあたっては、外部の変化を認めようとせず、過去の経験や常識にとらわれている人が非常に多いことである。
しかも、社会人として20年、30年と経験を重ねた方だけではなく、1998年以降に社会に出た(30代前半の)方にも、そのような傾向がみてとれる。たった10年程度の体験しかないにもかかわらず、20年、30年の社会人経験者と同質の”障害”を、ご自身の中に持っているケースが多くなってきているのである。
改めて、ドラッカーのこの書を、20代の若者にこそ読んで欲しいと切実に願う。
人材市場では、ベンチャーのみならず大手企業でも、企業家精神を備えてイノベーションをリードできる人材が求められている。昨今は、さらにベンチャーでも大企業でもない中小企業、創業家による経営が行われている中堅企業などでも、いよいよ、このような企業家精神を持つ経営者が求められるようになってきた。このようなマーケットの状況を、ぜひマネジメントを目指す皆さんには、しっかりと認識してほしいと思う。
最後に、ドラッカーの言葉をもうひとつ紹介しておきたい。
「あらゆる仕事が原理に基づいている。企業家精神もまた原理に基づく。企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、健全なこととすることである。」※注2
<注1>
「イノベーションと企業家精神」ドラッカー名著集5 P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)
ダイヤモンド社 (2007年3月8日 第1刷発行)
○終章「企業家社会における個人」より引用。
<注2>
同書
○第一章「変化を利する者」より引用。
関連情報
- 「厚生労働省・職業安定局」平成19年5月の完全失業率『3.8%』(6月29日公表)
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コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)