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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2005年 7月~9月 2005.07.01
募集型とスカウト型、転職市場に変化あり
2005年も後半に入り、多くの方が求人数の増加したことを実感しはじめました。みごと派遣社員から正社員になられた方、再就職活動に1年近くかかり、苦戦を強いられた末に希望を叶えた方などバラつきはありますが、2001年から2004年にセカンドチョイスとして(仕方なく)キャリアを選んできた方が、本来希望していたキャリアにめぐり合って『展』職を果たすケースが目立ってきています。
求人数が増加する一方、転職市場への人材流入も増えたことで、自ら応募する「募集型求人」とヘッドハンティングに代表される「スカウト型求人」、それぞれの局面が変わりました。今まで募集型の求人には出てこなかった優秀な人材が、現在市場に出てきています。人気の高い求人の場合、採用側にアドバンテージが生じることも。つまり、企業が優秀な方をより採用しやすくなっているといえます。したがって、個人が条件を吟味し、選び抜いてから応募をするような時間をかけた転職活動では、他の候補者に先を越されてしまうケースが多発しているのです。人は得てして、自分だけが優秀で特別だと思いがちです。市場には必ず他の候補者もいることを肝に銘じておくべきではないでしょうか。
また、新卒や第二新卒で人気の企業も、転職市場においては必ずしも人気が高いとはいえず、オファーした候補者から辞退されることがよく起こるようになりました。採用側のみが選ぶ時代は終わり、やっと候補者も選ぶ権利を持てる市場のメカニズムができあがったことになります。これはキャリアが適正に評価されはじめた兆しであり、喜ばしいことだと思います。
次に、スカウト型の求人では、スカウトに応じる個人が10年前に比べて圧倒的に増加しており、35歳から45歳の年齢層の人材が市場へ容易に出てくるようになりました。しかし、スカウト対象となり得る人材はまだまだ少なく、採用側が苦慮する状況になっています。
スカウト市場に挑む人たちの中で、「35歳まではスカウトの声が多くかけられたが、35歳以降は減ってしまった」という声をよく耳にします。面談はたくさん入るのに、採用まで至らないケースが数多く見受けられるのです。これは当然の話です。汎用性の高い20代と異なり、それなりのコンピテンスが求められますので、35歳以前のように転職活動を始めたからといって、3か月程度で多数のオファーをもらうということはもうありません。せいぜい自分に合った2~3のオファーから、ひとつを選ぶことになります。そのため、時間的な制約を視野に入れながらも、一つ、一つをしっかり見極める必要があるといえます。
前回(4~6月)のマーケット情報でも触れましたが、リスクをとらないで転職したいというタイプの方は、自分の状況がいつまでも35歳以下の時と同様だ、と思い込んでいる傾向があります。「もっと多数の案件からオファーがあるのではないか」「採用されなかったのはおかしい」などという感想を持って、結局は現職に留まることになってしまいます。
本当にプロアクティブに活動、決断、決心のできる方にとっては、やっと自分が描いていたデザインどおりのキャリアを見つけられる絶好の時期となりました。転職市場において、自分が納得できるものがないからと現職を続ける人、自分が納得できるものをきちんと選び取れる人とに、どんどん分かれてきた感があります。前者の方は、なぜ納得できないのでしょうか?理由は様々ですが、いつもそれは市場側にあるのではなく、ご自分側にあることが多いのです。前者の方は、そのことを認識できないまま何かを探している状態です。
自社内に安住している時と異なり、転職市場に出たかぎりは覚悟が必要です。相手を変えるばかりではなく、これを機会に自分も変わるという選択も考えるべきではないでしょうか。
関連情報
- 「総務省・統計局」発表、平成17年5月の完全失業率『4.4%』
- 「厚生労働省・職業安定局」発表資料、平成17年5月の有効求人倍率『0.94倍』
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)