転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2005年 新春特別号 
2005.01.01

業界別2005年求人市場の最新動向

アクシアムのキャリアコンサルタントが見る業界ごとの最新求人市場動向です。

製造業

日本の製造業においては、昨年2004年より求人傾向に大きな変化が見られ始めています。

昨年の例で言うと、二部上場クラスの中堅企業にて「30代後半から40代のマネジメント(経営幹部)候補のスカウト型求人」という、製造業では過去あまりなかった求人が多数発生しています。

その背景には、ここ数年で他業界に比べ一歩早くリストラクチャリング、再生が進み、経営者層も若返り新たな戦略を構築・推進している企業が増えているというところがあります。今年もこの傾向は続くでしょう。

現在ニーズが高いのは「M&Aの推進やアライアンスの構築などを視野に入れた新たな成長戦略を推進できる方」や「生産拠点の改革を進められる方」というマネジメント・リーダーです。条件面も年収で1500万円以上となるケースが多数あり、製造業でも本格的なスカウト求人が始まったといえます。

ライフサイエンス

昨年に引き続き、今年も企業の再編はさらに進むと考えられます。

新薬開発には莫大な費用と時間が必要です。それに耐えるには企業規模を拡大すること、販売力をアップすることが最重要課題です。

今年もMR、および臨床開発関連の求人が中心です。特に後者は企業がアウトソーシングする傾向にあるので、CROからの求人がますます増加することが予想されます。医療機器業界は介護用の需要が種々の場面で大幅に増えるでしょう。

それに伴ってセールスエンジニア、メインテナンスなどの求人が増加するものと予想しています。

IT

IT業界の求人が徐々に戻ってきています。企業のIT投資の復活に加えて、IBM/聯想の提携やSymantecによるVeritas買収など業界の新たな再編成が、これを加速しています。

特に目立つのは外資系・ストレージ系・モバイル系・セキュリティ系などです。ITバブル崩壊以降、撤退を続けていたIT外資のスタートアップ企業も、日本市場へ進出のチャンスを狙っています。

一方で、ITバブル崩壊の後遺症か、個人側では慎重さがみられます。それゆえ、IT業界で新たなキャリアを築く大きなチャンスが再到来です。

サービス

サービス業を全般的にみると、新事業立ち上げ、M&A戦略、提携戦略などの事業開発系ポジションが増えており、企業価値を高める戦略と実務を遂行できる方のニーズが強くなっています。

業界では、リゾート再生、教育(企業研修・塾など)、介護(訪問介護・施設運営)・不動産金融、EC、マーケティング専門など比較的新しい分野での求人が活発です。

コンサルティング

2003年後半からの再編の波を経て、また景気回復に伴って受注が増えており、それに従って採用も活発になってきています。これは戦略・IT・その他を問わず同様の傾向です(活発になっていても選考の厳しさは相変わらずです)。

IT系コンサルティングではIBMのPwCコンサルティング買収に続き、NECがアビームを買収し、「上流から下流まで」を一貫して手掛ける傾向がより強まってきています。

したがって、おなじ「戦略」ということばを使っていても、戦略系のファームとは異なり、IT系ファームではIT系の経験・知識があったほうが望ましいとなることが多くなっています。

金融

2004年の金融関連業界における求人傾向の特徴の1つとしては、景気の回復とともに、ここ数年ほぼ凍結状態であった業界の求人が復活してきたことが挙げられます。

国内でもここ数年で大手金融の合併、再編等が進んでおり、そういった再生企業の次のステップとして人材の採用ニーズは高まっています。昨年は外資系金融の不祥事等もあり、それらの影響から、今年も大きく人の流動化が起きることが予想されます。

したがい、総合金融を筆頭に、業界全体で専門的な知識、経験を持つ優秀な人材に対する強い採用意欲は今年も続くものと思われます。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)