転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2004年 4月~6月 
2004.04.01

物にすべきか、サービスにすべきか・・・
あなたはどちらの産業でのキャリアを目指しますか

最近、求人数は確実に増加してきています。しかし大半は、サービス産業と呼ばれる知的サービスや人的サービスに携わる産業の分野での求人です。具体的には、IT、ERP、SCM、BPR、企業財務、税務、法務、ビジネスコンサルティング、再生、M&A、金融、研究など、知識や見識がかなりハイレベルなところで必要な分野や、教育、人材、介護、リテール、販売、流通、フランチャイズ、ライセンス、コンテンツ、Eコマース、レストラン、リゾート、アウトソーシングといった、人が人に対して付加価値を提供する分野になります。

これとは対照的に、どんどん求人が減少している分野が、製造業を始めとする、目に見える『財や物』に関わる仕事です。正確には、これらの物に関わる仕事が減少しているというよりは、労働市場で物作りに関わる人材が飽和し、供給過多の状態になっているといった方が良いかもしれません。それ故に、こういった求人が発生した時には、全ての要件を満たすことが難しい、「難易度の高い求人案件」となります。言ってみれば、企業は「社員20000人の中に最適な人がいなかったから、外部からスカウトしてでも採用する」のです。

例えば、英語がネイティブ並にでき、デジタル処理系の半導体技術開発をした経験があり、且つセールスもできて、マネジャーとして将来の経営陣候補となり得る30代半ばの人というような感じです。

また、外資系消費財メーカーのCFOの求人では、40歳位でアメリカのGAAPがわかり、連結決算の経験が3期以上あり、企業投資などの直接金融も間接金融もしっかり経験していること。更に財務会計のマネジメント経験5年、消費財メーカーの勤務経験があること。企業買収経験があれば優遇、CPAや公認会計士保有者尚可など、というように非常にクリアするのが難しくなるのです。

「タンジブル」  = 目に見える物の価値を生み出す産業でのキャリア。
「インタンジブル」= 目に見えないサービスとしての価値を生み出す産業でのキャリア。

あなたの年齢も踏まえて、しっかりと考えてみてください。

いい悪いは別にして、目に見える物に関わる仕事でのキャリアを志向する人が多く、大抵の能力や経験では、市場では受け入れられないという現実を踏まえた上で、もう一度よく考えてください。

資格、年齢、職歴がミスマッチしてるのではなく、そもそも根底にあるキャリアの考え方が市場のニーズに合わなくなってきていることに気づいて欲しいのです。

あなたが提供したサービスを本当に喜んでくれる人がいる。「ありがとう」と言って対価を支払ってくれる人がいる。

ホテルやレストラン、介護ビジネスやコンサルティングでも、この原則は決して変わらないのです。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)