転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

2003年 10月~12月 
2003.10.01

ようやく動き始めた金融機関

10月に入り、ここ3年程すっかり下り坂であった金融機関での求人がようやく動き初め、反転の兆しを見せています。しかしながら、過去にあったバブル期、バブル期崩壊後の処理のころと異なり、中堅重視の求人が進みそうです。これは若者の増員はあまり行わず、中堅の20代後半から30代後半までがターゲットになり、すなわち経験者を重視する採用トレンドが展開することを意味しています。

10年前には日本の大学を卒業した新卒者が外資系企業に入社することはありませんでしたが、最近ではすっかり英語ができる経験者が外資系間で移籍することが多くなってきました。40代を超えてからは日系から外資に転職することは余程のことがない限り、ますます困難になってきたと言えるでしょう。その一方で、30代では外資系から日系に移る人がいたり、日系から外資、外資から外資、日系から日系へと、様々なケースがあり流動化が進んでいます。

元野村證券、元IBJといったOBのネットワークも、見られるようになってきましたが、個人、個人の力が強く問われる金融業界とはいえ、引受業務や、仕組み債、不動産証券化、企業財務、M&Aなど、前職の金融機関で経験しておくには、どうしてもある程度大手の金融機関でしか経験し得ない職域もあり、出身企業が問われることになります。

もう1つの金融関連での求人の流れは、ブティックタイプの専門機関にあります。これらの機関が設立され、実際に求人が始まっていますが、40代以降の人々には厳しい市場であるのが実情です。これはブティックタイプの専門機関では創業者が若いという特徴があり、どうしても若手を採用する傾向にあるためです。金融機関でのキャリア開発を目指す人は、年収の高さとキャリアのリスクを常に現実的に見定めて、10年、20年、30年と積んでいくためのプランを想定しておきましょう。

さて、2004年3月末からは、資本金1億円以上の中堅企業で人材不足に転じる見込みです。財務省が9月4日に発表した8月の景気予測調査の結果によると、2004年3月末に中堅企業は「不足気味」超に転じる見通しで、大企業、中小企業は「過剰気味」超でそのまま推移する見通しです。現時点では、いずれの企業規模でも「過剰気味」超となっており、まだリストラが完了していないことや、人員増の計画を実施できる体力をもった中小企業が少ないことを示しています。

中堅の資本金1億円の企業とは、外資系や、ベンチャー、2部上場、独立資本系の優良企業などが想定されます。

20代、30代は、これら求人が活発な領域で、しっかりとしたキャリアを育んでいくことで、未来をつかむことができますが、昔からの最大手企業などというだけで就職先を決めていたのでは、極めてリスクが高いとしか言いようがありません。

ベンチャー関連では、バイオ関連のCFO、COO、ハイテクのCOO、CFOなどの求人依頼が、今年前半に多く見受けられました。年末から年始に向けては、引き続きベンチャー企業からのマネジメント求人が多そうですが、加えて金融業界からの求人が加わりそうです。また外資系企業のマネジメントや、部長の求人は年始となりそうな見込みです。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)