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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2003年 7月~9月 2003.07.01
IT関連求人の多さ
BPR、ERP、SCM、CRM、ERP、アウトソーシング、Eソルーション、ITコンサルタント、プロジェクトマネジャー、SI、SE、最近一番求人が多いのは間違いなく、これらの単語に象徴される、IT関連の求人です。
しかし、IT業界を中心とした個人のキャリア形成で大きな問題が起きています。IT業界に5年程度いる20代後半の人達にその問題が現れ始めています。IT業務に疲れ、「もうシステムから離れたい」というものです。しかも、そろそろプロジェクトマネジメントができるあたりで、この気持ちが強くなる傾向があります。これは金融関連の職種、たとえばトレーダーやディーラーなどの職種にも見られる現象です。その理由は、SEとして能力のある人ほど忙しくなってしまうこと。そもそも自身の適性がIT業務というのに向いていないことに気がつく。将来どのような選択肢が、IT業界の中にあるのかわからなくなる、など様々です。
ITエンジニアを35歳まで進めてきて、パートナーになるのかといえば、すべての人がそうではないでしょうから、独立してITコンサル会社を作るという選択肢もあるのですが、問題はIT業界から離れたいと思った時です。現在の状況からすれば、事業会社のシステム部門からSierや、ITコンサルタント会社に転職することはできますが、逆があまりに少ないのが現状です。しかもそれすら35歳までの話になります。
他方、事業会社のIT業務を見てみましょう。IT関連企業の求人は多数あるのに対し、不思議なことに、事業会社におけるCTOやIT関連部門の部長といったITに関する責任あるポジションの求人があまりに少ないのです。そういったポジションに対して求人をしているのは、ソフトやアプリケーションの開発を事業の定款に掲げるIT業界のベンチャー企業のみです。事業会社の内情を見てみると、さほどITに明るくなくても、システム部門を任されているケースが多く見受けられます。
例えば、銀行などがまさにその典型です。理工系学部出身者というだけで、システム経験者ではなく、しかも銀行の本来業務を担当したいと希望している人材が、システムやCRM関連ポジションに配属されます。さらにその上の部長や役員にいたっては、一向にITについて理解がありません。このような銀行のIT担当の中間管理職の方が、リストラあるいは経営破綻で、労働市場に出てこられたとしましょう。間違いなくマーケットバリューはありません。銀行出身者として必要されるコアコンピテンスも弱く、ITでもないわけです。このような人材の無駄遣いが日本の会社ではよく見受けられます。事業会社においても、ITに関する人材に対してのキャリアの展望は、はっきりとしていないのです。
結論からいえば、日本でのIT業界では、産業が新しいと言えばそれまでですが、さほどキャリアの形成パターンに広がりがないというか、本当に未成熟な感じがします。逆もまたしかりで、日本企業の経営スタイルの中では、事業会社でのIT関連のキャリアの展開も広がりのないものになってしまいます。35歳以下でIT関連のキャリアを選んだ場合、35歳以降のキャリアは、予想以上に困難だと認識しておくべきでしょう。
ものづくりの大切さ、失ってはいけない技術、さらに推し進めてゆくべき製造技術やプロセスは存在する。しかし、目に見えないサービス産業こそ、世界市場での競争力が問われるのだと思われる。
一時的にインターネットベンチャーのバブルがあったのは、新しいITという専門性を選んだ人たちにとって、もっともやりがいのある、産業社会として伸びるという確信があったと同時に、オールドエコノミーの産業社会では虐げられていた(言い過ぎかもしれませんが)からだと思われます。そしてまた、インターネットバブルが落ち着いたと思ったら、BPRバブルのような状態です。
間違いなくIT関連の求人は今後も多いでしょう。しかし、IT関連の求人が多いからといって、自分の適性も考えず、システムエンジニアとか、コンサルタントという語感にわけもなく憧れたりしないで、しっかりと自分自身と向き合い、インターンシップを活用して実践で試したり、現職者にしっかり聞いてみましょう。ITといっても大変多くの職種があります。どんなITの仕事が誰のためになっているのか、自分にあっているのか、40歳、50歳になっても、それを続けているのか、続けられるのか?考えてみましょう。
関連情報
- 「総務省・統計局」発表、平成15年5月の完全失業率『5.1%』
- 「厚生労働省・職業安定局」発表資料、平成15年5月の有効求人倍率『0.61倍』
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)