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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2000年 10月~12月 2000.10.01
2020年に備える新たな10年
アクシアムへの求人のご依頼が、急激に増加しています。年間1000ポジション以上の求人のご依頼があり、これは前年度比30%以上にもなります。勝ち組みと呼ばれる企業からの求人が急激に増加する一方、労働の供給側である市場において、転職活動を展開する人達の能力、展望との間には、相変わらずのミスマッチが続いています。
21世紀がまもなく始まります。日本の本当の問題は、総務庁人口統計(H12年調査)からもわかるように、生産を支え、同時に活発な消費の要でもある20~39歳の年齢層の人口が、2000年から2010年まではほぼ同様なのに対し、2010年から継続的に毎年6%程度ずつ減少していくことです。
これはいろいろな問題を提起していくことでしょう。
2000年から2010年の期間は、個人も企業も、そして資本家もそれぞれの準備が必要な世紀始めとなります。2010年までに何かを成し得ておけば、2010年から2020年にも対応できるでしょう。
新しい試みが始まる新世紀に、1年の計、10年の計、50年の計をデザインするためにも、キャリアの市場の現状をまとめましたので、参考にしてください。
インターネットを通じてどれだけ多くの人が転職していくのでしょうか?
2000年 | 2005年 | 2010年 | |
---|---|---|---|
10~14歳 | 657 | ||
15~19歳 | 751 | 657 | |
20~24歳 | 857 | 751 | 657 |
25~29歳 | 994 | 857 | 751 |
30~34歳 | 880 | 994 | 857 |
35~39歳 | 808 | 880 | 994 |
40~44歳 | 779 | 808 | 880 |
20~39歳の人口計 | 3539 | 3482 | 3259 |
規制緩和の経緯
労働市場をめぐる変化は以下のポイントにまとめることができます。
- 1997年 紹介職種範囲をホワイトカラー全体に広げた職業紹介の自由化
- 1999年 新卒学生紹介の自由化
労働省民間職業紹介状況調査(2000年3月)によると、ハローワークと民間人材紹介の利用度について、以下のような数字が出ています。
取扱い求人案件数 | 相談者数 | |
---|---|---|
ハローワーク | 138万件 | 252万人 |
民間人材紹介 | 32万件 | 18万人 |
人材紹介会社の数は急激に増加しているのに対し、実際の利用者は18万人に留まっています。
日本の転職市場の現状~転職希望者の傾向
ここでは、企業が求めている人材は、25~35歳の生産性の高い人材や、35歳以上のマネジメントができる人材であることから、現状の労働市場の変化を述べながら、5年後の転職希望者数と、25歳~35歳の自発的な転職希望者数について推測していきます。
全体を見てみると、日本の大企業を中心に本格的なリストラは97年から始まり、それに伴い、就業者における正社員比率が年々減少していることが判ります。パート、派遣社員、契約社員が増加し、正社員数が全体で減少しているのです。それは、会社理由によるミドルマネージメント以上の退職も多くなっていますが、同時に若手を中心とした自発的な転職者も増加しているためです。
就業者数における正社員数の比率を考慮すると、就業者数は2年間で151万人程度減少し、正社員も減少しました。また就業者数における正社員比率も序々に減少しています。
就業者 | 正社員 | 正社員が就業者に占める割合 | |
---|---|---|---|
1997年 | 6451万人 | 3854万人 | 59.7% |
1998年 | 6451万人 | 3737万人 | 57.9% |
2000年 | 6300万人 | 3630万人 | 57.6% |
就業者における正社員割合の減少率がこのまま毎年0.15%になると推定すると、2005年には、就業者5915万人、正社員は3366万人となり、正社員が就業者に占める割合は56.9%となります。
次に、転職希望者は、年々増加しています。これを受けて、各調査機関より発表されている転職希望者についての発表を以下にまとめました。
1992年 | 623万人 |
---|---|
1997年 | 714万人 |
↓毎年前年度対比3%の増加と推定 | |
1998年 | 762万人 |
このまま毎年3%増加すると仮定すれば、2005年には転職希望者は937万人に及ぶと推測できます。
次に、総務庁省求職者調査(1998年9月)から、年齢的な考慮を行うと、転職希望者全体762万人の内、25歳以上34歳以下の転職希望者数は213万名となり、その割合比率は28.0%と高くなっています。
この年代は、他の年代に比べて転職希望者比率が高く、その転職理由としては、やりたいことや将来的な展望のためなど、自発的な理由が1/4を占めています。一方35歳以上の場合は、会社の労働条件の悪さや将来性への不安、会社都合など非自発的な理由が過半数を占めています。また、週刊東洋経済2000年5月13日号「キャリアアップ白書」をはじめとする各種雑誌の調査などからは、将来、チャンスがあれば転職の可能性を求めたいと、自己啓発のための教育へ投資している人が22%にも上り、若い人ほど前向きで自発的な転職を、潜在的に希望してことが伺えます。
最後に、25歳以上35歳以下の転職希望者数について推定します。
2005年における25歳以上34歳以下の転職希望者数は、総転職者数に占める比率が現在と同率と考えるなら、転職希望者予想数937万人の28.0%、すなわち262万名になると推定できます。転職希望者のうち、就業者における正社員が占める割合の予想値56.9%を考慮すると、2005年における25~34歳の正社員の転職希望者数は、149.1万人と予測できます。
その結果、34歳以下の転職希望者が35歳以上の転職希望者よりも、今後活発に転職してゆくことが充分に予測され、150万人もの人材が転職市場に出てくることになります。加えて、潜在的に、チャンスがあれば転職したいと思っている人材は、その倍以上にもなるものと考えられます。
関連情報
- 「総務庁・統計局」発表、平成12年8月の完全失業率『4.6%』
- 「労働省職業安定局」発表資料、平成12年8月の有効求人倍率『0.62倍』
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)