- MBA転職・外資系求人(HOME)
- 転職コラム
- 転職市場の明日をよめ
- ベンチャー企業が求める人材の3パターン
転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2000年 4月~6月 2000.04.01
ベンチャー企業が求める人材の3パターン
店頭、ナスダックジャパン、マザーズ、サイメックス、それぞれの証券取引市場が活発になり、ベンチャー企業が過去にないほど注目されている。海外投資家、機関投資家、ベンチャーキャピタル、個人投資家を通じて、お金が行き場を探している。これら大量の資本の流れに同調して、人々もその行き場をベンチャー企業に求めている。
40歳以下の世代にとって、自分の身のまわりにストックオプションで億万長者となった友人が出始めたことにより、「年俸よりもストックオプションをどれだけもらえるか?」が話題になってしまった。年俸が高くとも税金などで可処分所得に大した変化がないことに気付き始め、同じ時間、人生を投資するならベンチャー、特にドットコム系の方が良いと考え始めている。まさに「ドットコム系、お金も人もどっと混む」という状態。しかも大手企業の本流と呼ばれている人達にこのような大きな変化がでてきている。傷のつかないコース、昔の先輩エリートが歩んだ社内の出生コースを、最近のエリートは「学ぶもの、挑戦するもの、わくわくできるものがない。リスクを取るようなビジネス上の判断力が身に付かない」という意識に完全に変わってしまった。そんな若手の変化を知らない会社側は、「どうしてこんな出世コースを投げ打ってしまうのか?」といぶかしがるだけである。強い思いがある人にとってのキャリアの選択の場合であれば、これは好ましいことであり問題ではないが、やみくもにネットベンチャーなら何でも良いからという人も増えている。これは丁度、実際には中身の無い会社の株価に期待値以上の値がついているようなもので、かなり問題だ。何故なら、お金はどんどん行き場を変えて行けるが、人間は簡単には行き場を変える訳には行かないからである。日本の大企業だけでなく、世界的にも投資銀行、コンサルティング会社、コングロマリット等、今まで最も優秀な人材が選ぶキャリアとして考えられてきた産業から、優秀な人材がインターネット系企業に移動してしまっていることが問題になってきている。因みに弊社にもこの一ヶ月だけでも10件近い社長、役員求人が寄せられている。外資系インターネット関連企業が大半である。もちろん日本のベンチャー企業からも幹部の求人は絶えない。
93年という早い時期からベンチャー企業からの求人に応え、何人ものキャリア紹介に成功した経験から、ベンチャー企業の求人ケースは、大まかに3つの類型があることが判ってきた。創業から店頭公開、公開直前、公開後という時期により必要とする人材が違う。まず最初に、創業から公開を目指す時期には「セールス」「マーケティング」が重視される。次の公開直前までの発展期には、今まで自由奔放であった組織形態を整え企業の態を成すために「企業財務」「会計」「人事総務」「物流」などの幹部が必要とされる。特に初回決算に監査を入れ、外部の財務アドバイスなどを受け入れ始めた時に需要が明らかになる。最初からベンチャーキャピタルが投資している場合には、公開準備に入ってから求人が顕在化することは余りない。最後は公開後で、潤沢な事業資金があり余るほど調達できるため、すぐに関連会社や新規事業の展開が起こり、「経営者」「事業責任者」「執行役員」などP/Lに責任を持てる人材が求められる。技術系では、開発系エンジニア、サイエンティストなどは創業時には必要だが、それ以降はアプリケーション、サポートエンジニアが必要とされる。もちろんベンチャー企業にも様々な形態があり、開発型ベンチャーと呼ばれるような会社では、開発者は常に必要とされるが、その要求されるレベルは極めて高い。単純に「やりたい」では入社は難しい。実績のある開発者にしか報酬を支払う気持ちが経営側にも株主にもない。ベンチャー企業においてキャリアを持とうというのであれば、職能を持ち合わせていることは勿論だが、それ以上に自分の思いがはっきりとしていなければ成功はない。自分のキャリアの資産、時間を有効に活かせる会社であることは勿論だが、それに加え尊敬できる上司、創業者がいるベンチャーを捜すしかないのである。ベンチャーだからこそそこに集う「人」が成功のキーとなる。自分も相手も「人となり」がポイントになる。そこで大切なことは、文字媒体や、ホームページだけでは絶対に見えてこない、未来の仲間、Companyの人となりである。面談を通じて、十二分に吟味すべきは、簡単そうで、もっとも難しいこの「人となり」である。後天的な教養や知識、経験で隠されているかもしれない、この生まれついての人間の質、才が大切になってきたのが、最近の市場である。同時に我々にも人の才、ギフトとスキルと見抜くことができ、スペックだけではない何かを感じ取れるかどうかが求められている。
関連情報
- 「総務庁・統計局」発表、平成12年2月の完全失業率『4.9%』男性の失業率5.1%に悪化。
- 「労働省職業安定局」発表資料、平成12年2月の有効求人倍率『0.52倍』前月と同水準で推移。
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)