転職コラム転職市場の明日をよめ

アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)

1996年 1月~3月 
1996.01.01

今年ジョブマーケットで出会ったキャリア志向の人々の人事部には届かない本音

「96年への期待を込めて」

20代男子、銀行勤務

転職どころではない。今の日本が置かれている経済環境、例えば大量の赤字国債の発行、国際的銀行の信用の失墜等を考えると、社会人、日本人として初めて日本の将来を考えさせられた。できる限り銀行の中で日本のために改革をしたい。自分の事は今考えられない。やるべき事が自分にはあると思う。

(期待しています。骨は拾いませんが、マネージメントに対して本気でぶつかり、限界を超えれば、生身のあなたを拾わせて頂きます。その時には素晴しい経験を持つマネージャーとしてキャリア・オポチュニティーを紹介します。by アクシアム)

20代大卒女性、求職中

社会的問題があまりに大きく、自分の就職状況も含め、現実に直面した時の自分の非力さを感じる。でもやれる事がある。海外事情にも一切興味なく、何事にも「やはり日本は変わらない」と決めつける自分の父親(大手企業役員)を変えてみせる

(応援しています。なぜ彼女に就職先がないのか、本音で会社のために話せる人を企業は必要としないのでしょうか。個人、会社、社会の三者の目的が一致する事は単なる絵空事だと思っていたら大変です。再生したアメリカの大手企業やアジアの元気なベンチャー企業、すなわち投資家と消費者と社員が合致した形態の新しいインセンティブ制度を持つ会社に市場が独占されてしまいますね。by アクシアム)

30代男子、事業会社勤務

今年、インターネット・ホームページ開設準備を担当をした。海外投資のバブルの時期と同じで、「何を目的に自社ホームページを作るのか?」の議論もなく、「競合他社が初めたから、それ以上の予算でやれ。」と言う役員。おまけにコストに見合う採算についても実際には何の成算もなく、一体、リスクを踏まえたまともな仕事をする気があるのか疑いたくなるような上司を見て、会社人間として自分の将来について改めて考えさせられた。インターネットの事業は、自分が会社に残るか、会社の外に自分の道を見つけるかの良い試金石になった。インターネットを扱うと、上の世代から学ぶものは究めて少ないが、逆に自分で判断し自分の人生を選ぶ若い世代に、自分の世代とは違うしたたかさを学ぶ事が多い。

(世代を超えて学ぶべき人に巡り会えるかどうかもキャリアの上での自分の責任です。最近人脈ばかり広げている方をよく見かけますが、広げる事が目的でもありませんし、そんな人に限って深い人間関係を構築していない場合があります。知り合いと本当の人脈は違います。一緒に何かを成し遂げた人との人脈を築きましょう。by アクシアム)

40代男子、事業会社勤務

コンピュータの世界では40才はすでにシニアだ。若い人に権限をもっと委譲しないと、これから情報産業だけでなくどんな企業も生き残れない。「それなら私は何をするべきか」を真剣に考えさせられた一年だった。会社の早期退職制度もすでに源資がなくなる時代で、若干でもベンチャーに投資しようと思う。今から自分に対して投資したり、貯金するより、自分が評価し、信じられる若い人に投資した方が、社会のためにもなると信じる。ただし自分には家庭もあり、例え100万円と言えど一大決心だ。でも60才の人よりもリスクははるかに低いし何とかなると言う気がする。

(若い人は時間を、シニアはお金を投資しませんか?by アクシアム)

40代男子、ベンチャーキャピタル勤務

独立したい人や、店頭公開を考える会社が増えた。しかし独立する事が目的であったり、公開が目的となっているケースが目立つ。ゴールを真剣に考えるべき。ゴールがなく、キャリア・ゴールが言えない日本人像がそこにダブッて見える。一方、大風呂敷を広げる事業家が壮大なゴールを描くが、これは逆に具体性がなく、投資に値しない。キャリアについて語る若い人で「ゴールは会社をつくる事です。でも何をしたら良いか判らない。どうしたら良いか勉強します。」と言う人が多数派だが、もっと自分の経験に根差した強い何かが必要だと思う。プレーヤーがいない。会社に勤めながら準備を個人でする事は、会社内で出世するよりも大変だと思うが、「ベンチャーって何」の勉強会とは違う、真剣なプレーヤーの集まりに期待したい。また可能性のある人がいたら、内緒で私に教えて欲しい。

(はい、はい。喜んでお教えします。by アクシアム)

皆さんいかがですか?今年、当社でキャリアカウンセリングをさせていただいた方の代表的な声を年代別にまとめました。実際には複数の人の声を性別、年齢別に合成しましたが、私が感動し、懸命に心からキャリアをサポートしようと思った声です。今年も、こんな声に沢山お会いしたいと思います。

概況

95年11月の有効求人倍率は0.63倍、完全失業率は3.4%と横這状態
約6400万人の労働者人口の中で、200万人強が失業中です。既に失業者が社内失業者も含めれば潜在的には600万とも800万とも言われています。雇用が通信や情報産業により150万人程度新たに創造されたとしてもまだまだ不足です。外務省の統計では、海外在留日本人は90年に62万人だったのが93年には68万人に増加しています。同時に日本国内における登録外国人数が、90年には107万人だったのが、93年には130万人と同じく増加しています。95年の統計はまだ先となりますが、ここ1年日本企業では欧米から人材を撤収し、国内に戻す作業が進む一方、アジアに新たに人材を投下する傾向が見られます。留学においても欧米以上にアジアへのシフトが見られます。しかしながら、外務省の統計では一層、人材の国際流動が進んでいる事を示しています。

関連情報

コンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)