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転職コラムキャリアに効く一冊
キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。
2015年3月
元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人
村上 賀厚 (著)
日系4社、外資5社を経験した人事のプロが語る、組織人としての心得帳です。広辞苑で「要領がいい」を調べてみると「物事の処理や立ち回りがうまい」とあります。まさに本書の主題は「管理職=出世した人」が、最も身につけておかなければならない能力とはなにかということです。
大阪生まれの村上氏とは本当に長い付き合いになります。同じ年で、同じ郷里、とても近いところで人事関連の仕事に携わってきました。さらには、コーネルのエクゼクティブプログラム(東京で2週間開催された特別プログラム)で席を同じくしたこともあるほどです。
村上氏の略歴は、以下のとおりです。同志社大学商学部を卒業後、日本のマーケティング会社2社でセールスおよびプランナーとして勤務。その後、日本コンサルタント協会、住友ビジネスコンサルティングで人事コンサルティングを経験。イェール大学経営管理学修士号(MPPM:Master of Public and Private Management)取得。卒業後はフォード自動車(人事課長)、JDエドワーズ(人事部長)、日本モンサント(人事総務本部長)、ロイター・ジャパン(人事本部長)「GEコンシューマー・ファイナンス(人事本部ディレクター)。
村上氏は、外資に多い、転々とする人では決してありません。外資で責任ある管理職を担うには、転職は覚悟しなければならないのだと思います。氏らしいタイトルの本だなと思います。安易な精神論や経営哲学やヒューマニティー論に逃げることのない、形骸化した今までの人事本とは明らかに一線を画す書です。
氏がこれまでにたくさん見てきた、要領よく出世する人、ビジネスリーダーに抜擢される要領のよい人のことがまとめられています。実践的でシニカルなその内容は、読後に思わずニヤッとしてしまうはずです。彼は巧妙です。本書を本屋で手に取る人がどんな人なのかをよく理解しています。彼と同じように、組織の中で管理職を務める人達や、プロフェッショナルな職業人としてキャリアを積んでいきたい人なら、誰もが無視できないプロモーションのやり方、上司が抜擢する理由について、述べられているからです。
書の中では、要領よく出世する人は、幸せに働いている、と主張されています。村上氏の本心は、組織で働く者として、幸せに働くとはどういうことなのかを皆さんに伝えたかったのでしょう。
文中、友人が語るところがありますが、私は、それは彼自身の本音を友人に語らせている彼の心の言葉なのではないかと密かに疑っていますが、そんなところも面白いところです。そんな形で本音が語られているがゆえに、読んでいて、きっと目から鱗と思うところが多いはずです。
章立ての見出しだけでも、
外資系で要領よく出世する人の「8つの秘密」
要領よく出生する人が密かにやっている「20の習慣」
要領よく出世する人が大切にしている「15の考え方」
要領よく出世する人がプライベートで守っている「4つの教え」
とあります。いかがですか?なかなか心をくすぐられるタイトルだと思います。
日系企業と外資系をステレオタイプで分けてみている人は、本書にかかれた、外資の中で要領よく出世する人の実態を知り、驚くと思います。最近の外資が昔の外資から変わってきたのではなく、およそ外資でも日本でも要領よく出世する人の共通点が近づいてきたのかもしれません。
第一章の2つ目の秘訣にあげられた、要領よく出世する人の2つ目の秘訣は、「ジョブディスクリプションは無視している」というものがあります。外資というとJob Description いわゆる職務記述書なるもので明確に規定されているものと思いがちですが、要領よく出世する人は、各部門の隙間に落ちる仕事をどんどん探して対応したり、あいまいな仕事に対しては、ことごとく先回りして自発的に提案して仕事を作り出し、相手に判断を求めていきます。ジョブディスクリプション以外の例外的なことが生じてもどんどん自発的に仕事を進め、それを解決していけばこちらの要求が通りやすくなるとあります。結果的に仕事がやりやすくなるということです。
本書では、このように今まで聞いたことがないような人事から見たみたリーダーや選ばれていく人達の共通点が豊富に述べられていますが、第4章のプライベートに守っていることの4つ目は「明快でないキャリアプランをもっている」というものです。これは、ビジネスリーダー論が世界中で変化してきていることと無縁ではありません。数年に一度の経済的クラッシュなどが起こる中、大企業でも中小企業でも、日系も外資もなく、キャリア設計が20年、30年のプランが描けなくなっています。「自己能力への継続的投資は毀損しません。(中略。)一生涯働くためのキャリア設計というものが本当に必要でしょうか?(中略。)固定化したプランが時代に合わずに、邪魔になるリスクのほうが高くなります。」本書の中で氏が一番主張したかったことなのだと思います。
長年、人事畑で勤めてきた村上氏のこの言葉はとても重要です。
5年、10年と期限を意識してプランを組むのではなく、頻繁に修正する。労働市場でヘッドハンターなどとの対話から自分のキャリアを定期的に棚卸する。「留学するならどうしたらいいか?」「管理職になるには何を勉強すべきか?」「仕事でどんな成果を出すべきか?」を考え、常に「本当に?」と常識を疑いつつ、将来を模索することが大切と説いています。
キャリアデザインを考え、転職に際して現実的なキャリアの選択を、個人とともに相談している小生にとっては、少々異なる考えもある部分ではありますが、概ね村上氏の主張に同意できます。
そして、自立する勇気、夢を持ち続ける勇気、大成を期するには、意思の力が必要、サラリーマンとしても、職業人生を終える時に「よくやった!楽しかった!」と思いたいなら、本書は、その一助になると思われる。という村上氏の結びの言葉には私も大いに共感します。