転職コラムキャリアに効く一冊

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2013年9月

スタンフォードの未来を創造する授業
清川 忠康 (著)

1982年に大阪で生まれた若者が、2012年、30歳を目前に起業する。そんな起業家が日本にも出てくるようになりました。著者である清川さんが学んだのはStanford Business Schoolです。

在学中にベンチャー企業オーマイグラス株式会社を創業した清川さんの本書は、今までMBAに留学した人達が書いてきた、ビジネススクールの紹介本とは明らかに一線を画すものです。なぜなら、過去のものは卒業後数年経って、当時の事を思い出す日記のようになっていたのですが、本書はまるでブログが本になったかのような、現在のStanford Business Schoolがリアルにいきいきと描かれているから、さらには、筆者がMBAの延長線上に未来の成功、社会を変えることに挑戦しているからに他ありません。過去のMBAの人達が書いた本は、大抵が留学体験記、あるいは教科書として使える講座内容の紹介が多かったのですが、本書は、単に体験記として完結していないのです。読了後には、きっと、読者は私同様に清川さんを応援したいという気持ちになると思います。

「Change Lives. Change Organizations. Change the World.」この言葉はStanford大学をもっとも良く表す言葉で、理念でもあります。卒業生はこの言葉から逃れられないそうです。

シリコンバレーは「世界を変えてみせる」という人の話を誰もが前のめりで聞いてくれる場所。Stanfordは「世界を変えようと言う人に機会を与えて、育てる環境を生み出している世界的大学院機関」と言え、在校生の95%が起業したいと答える学校です。実際に創業するのは10%だそうですが、それでも日本に比べれば全く考えられない率です。本当の起業家達がクラスに来て、沢山リアルな話をしてくれる、そんな贅沢なクラスは、学生達の人生観を大きく変えてくれます。

「起業すれば、君が投資銀行で一年間下した意思決定の回数よりも、一日で下す意思決定の回数のほうが多い。」

「何かをした後悔と言うものは、時が経つにつれて薄れていく。だが、何かをしなかった後悔は、一生消えていくことはない。」

「早くチャレンジして、早く失敗して、失敗から学び、次のアクションにつなげよ。」

「イノベーションは偶然ではなく、プロセスである。」

いかがですか?普段、こんな刺激的な言葉の数々、聞いたことがありますか?

アメリカの大学を卒業されている父上から、アメリカに行ってこいと幼少の頃から言われていた清川さんは、後に経営共創基盤で代表取締役CEOの冨山氏に出会い、結果的に冨山氏の母校でもあるStanfordに留学することになります。慶應義塾大学進学やイリノイ大学院に留学したこと、投資銀行に勤めていた話など、20代の自分のキャリアの考え方やジレンマも率直に描かれています。Stanfordでのクラスの内容や留学生活については、ここでは割愛しますが、非常に面白い内容です。

清川さんは、本書のあとがきに、「世界を変える」と言うのは一部の特権ではなく、誰もが世界を変えられるということを伝えたいとおしゃっています。私はこの言葉に一番共感しました。

グローバルキャリア、MBAを考えている人、起業を考えている人には是非読んで欲しい書です。

スタンフォードの未来を創造する授業 出版社:総合法令出版
著者:清川 忠康 (著)