転職コラムキャリアに効く一冊

キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。

2012年11月

ウォール街指令―財閥モルガン
大森 実 (著)

本書はプラザ合意があった1986年に出版され、現在、新刊では購入できないものです。毎日新聞の記者であった著者は、1966年に新聞社を退職し、ジャーナリストとしてアメリカで30年間取材を続けました。取材を通じてするどい視点を身につけ、日本新聞協会賞、ボーン賞、UCLA国際ジャーナリズム賞などを受賞しました。

大森氏の「勝者の歴史」シリーズには、JPモルガンの他、スタンフォード、ロックフェラー、フォード、デュポン、ヒューズ、カーネギー、リードなどアメリカの産業を興した様々な偉人があります。「勝者の歴史」として、彼らの人生哲学を探るシリーズになっています。

さて本書について少し触れます。コネチカット生まれのピップと呼ばれた青年、JPモルガンの実家は商社を営んでおり、彼は裕福な家の子供でした。南北戦争のころ青年ピップがコーヒー豆で儲けた話、ドイツに留学、大学を卒業してすぐに結婚、結婚後わずか3か月目に愛する妻を失うという話から本書は始まります。乗っ取り屋と言われ、M&Aビジネスで巨万の富を得て、裏切られることや、情報をビジネスにした最初の金融界の巨人は、実は「人格に金を貸すこと」を信念としてもっていた偉人であることなどが生き生きと描かれている、人や企業の信用に対して考えられる書です。

今回のキャリアに聞く1冊の主題は、実はJPモルガンでもアメリカの偉人や起業家の話でもありません。

経営者、起業家、企業人、偉人、科学者、芸術家、歴史に名を残した人達の伝記をぜひ、沢山読んで欲しいということを筆者は伝えたいのです。特に若い人達には自叙伝でも自伝でも、あるいは回顧録であっても沢山読むことを薦めます。

自分がこれからどんな人生を歩んでいくのか、思い描けないのであれば、あれこれ思い悩むぐらいなら、過去の偉人たちは何を経験し、何を苦悩して、どのような苦悩や苦労の果てに成功していったのか、それらがヒントになると思います。

ウォール街指令―財閥モルガン 出版社:講談社
著者:大森 実 (著)