転職コラムキャリアに効く一冊

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2012年7月

変化の時代、変わる力 続・経営思考の「補助線」
御立 尚資(著)

「より強いものが生き残るのではなく、より賢いものが生き残るのでもない。より変化できるものが生き残るのだ。」という、生物学に造詣のある方には馴染みのある言葉で始まる書は、日本の経営者だけではなく若者にこそ一読を勧めたい。狭い日本のみならず世界規模で起きている変化や、今までにないほどのスピードで急激かつインパクトの大きな環境変化について、どのように自身の思考の枠を広げればよいかの道筋をガイドしてくれている。

決してキャリアデザインのためのトラの巻や指南書の類ではなく、著者の主観的なメッセージが色濃く書き込まれ、時代の空気に影響されつつ著書の考えを体系付けたものであるからこそ、著者のコメントは、若者の心に届き、長くとどまる言葉となろう。著書の主張は、「変化を恐れず、自ら変化を理解し、乗り越えようとさえすれば、ルネッサンスのごとき新しき価値を生み出すことができる。」というものである。

ちなみに小生は若者ではないが、私の心に届いた箇所をご紹介しておきたい。

  • 親の世代と同じ感覚で、「大卒の就職は、大企業のホワイトカラー」という思い込みがある限り、景気の良し悪しにかかわらず、現在のような「就職難」は解消しない。
  • ―「共同体主義」の名の下に、「思考・行動のバイアス」を許容して、なすべきことをなしていないのではないか?という厳しい問いかけを自ら行い、さらに、
    ―自分たちが、本音の部分で持っている「バイアス」を表に出し、それを変えるかどうか、世代を超えて、徹底議論する。
  • 震災以前からずっと「日本におけるリーダー不在」が叫ばれてきた。(中略)ただ、私自身は、今回の国難の結果、必ずや将来は素晴らしいリーダーが日本に登場してくる、という思いを強くしている。第二次世界大戦後、日本の復興を担ったのは(中略)、終戦時の若年層だった。戦争指導者層のパージもあり、さまざまな企業でもリーダーの若返りが進んだことは、ご承知の通りである。
  • ペリー来航時代-木戸孝充は19歳、山縣有朋15歳、伊藤博文は11歳であった。
  • 第二次世界大戦後の幾多のリーダーたちも、幕末・維新の多くのリーダーたちも、国を揺るがす大きなチャレンジの中で、何かを感じ、自らが何をなすべきかについて、深く考えを致したに違いない。言い換えれば、困難を通じて、大きな志を抱いた、と言ってもよいように思える。またその志を果たすため、学び、自らを鍛え、そして志に向かって行動することを通じてリーダーとなっていった。大きな困難が国や社会を襲った時には、こういった形で将来のリーダーを生み出す一種のメカニズムが働くのではないかと思う。以前ISL(中略)の理事長である野田智義さんから、「リーダーシップ・ジャーニー」という言葉とその意味するところを、教えていただいた。
    1. 偉大なリーダーの多くは生得的にリーダーで「あった」のではなく、リーダーに向かっての旅(ジャーニー)を通じて「なった」ものである。
    2. 生まれながらの資質の影響もあろうが、いかに「何かを達成したい」という思いを抱き、そのために歩み続けていくか、ということのほうが重要。
    3. ガンジーやマザー・テレサ、あるいはマーチン・ルーサー・キングといった偉人たちも、幼少の頃はごくごく普通の、あまり目立たない子供であった。すなわち、偉大なリーダーは、必ずしもリーダーたるべく生まれついたわけではなく、多くの人が、志と努力次第でリーダーたり得るはずだ。

みなさんの心にはどのように届いただろうか?

小生はこの激動の時代を、そして次代を担う新たなリーダーが生まれてくることを願ってやまない。

変化の時代、変わる力 続・経営思考の「補助線」 出版社:日本経済新聞出版社
著者:御立 尚資(著)