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転職コラムキャリアに効く一冊
キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。
2011年2月
ジェフ・イメルト GEの変わりつづける経営
デビッド マギー(著),関 美和(翻訳)
著者のデビッド・マギー氏が、「ターンアラウンド ゴーンは、いかにして日産を救ったのか?」につづき、今度はGEのジェフ・イメルトの実像に迫ります。さらに本書では、イメルトやGEことだけではなく、激変する経営環境の中でリーダーとしてとるべき考えや行動、持つべき規範などわれわれが学ぶべきことが多く示唆されているので、読み応えのある一冊です。
ジャック・ウェルチが強引な父親のようなリーダーだったのに対し、イメルトは自身の経験からお兄さんのようなリーダーになったとよく言われていますが、この書籍を読むと改めて本当にそうなのだなと感じます。強力なリーダーシップ、強引なまでに組織を牽引するパワーなどはどこにも見えません。苦境を乗り超える使命をもった組織の長として、変わりつづける経営を実現することは即ち、苦悩を乗り越えようとする社員やリーダーを大切にすることに尽きるのだと思い知らされます。
この書の良さは、素晴らしい経営者から経営を引き継いだ経営者が、さらに素晴らしい経営を続けるという極めて難しいケースが書かれているというだけではなく、これほどの変化が短期間で何度も押し寄せてくる時代に求められる経営の本質について、また求められる経営者としてのリーダーシップについて明確に記されていることです。
ウェルチから引き継いだ時には、GEはもうこれ以上ストレッチできないほどに成長してしまっていたので、後はもう下がるだけと言われていました。かつ就任1週間目で9.11が起こり、金融市場がクラッシュ。ところが実際には、そこから7年で60%も売上を拡大していたことはあまり知られていません。
そのイメルトが、ウェルチ時代の人材育成投資はどのようなことがあっても減らさないという原則を貫きつつも、経営手法についてはどんどん変化させていったことが述べられています。また、2007年からの3年間だけを振り返ってみても、サブプライム問題、リーマンショックと災難に見舞われますが、その後、電話1本かけただけでバークシャー・ハサウェイに増資を引き受けてもらったあたりのことまでもダイナミックに書かれています。
そうしたエピソードも含め、変化に強い人材、変化に強いリーダー、変化に強い経営者になるにはどうすれば良いか、慧眼を得ることができる書となっています。
ちなみに、GEのクロトンビル(ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所)では、イメルトを含め、多くのGEのビジネスリーダーがメンターとして教鞭をとっているというのですから、うらやましい話です。
次世代のビジネスリーダーが先達に学ぶことができる仕組みといえますが、その中で教育ツールとして使われている「ビジネスリーダーがやるべきこと」というイメルト自作のチェックリストがあるので、ここに紹介しておきます。
まさに、変化に強い次世代ビジネスリーダーを目指す人には、必須のチェックリストです。
- 個人的に責任を負う
- つねにシンプルに考える
- 規模、程度、状況を理解する
- 役割分担と時間管理に注意する
- コンスタントに学習し、教え方を学ぶ
- 自分のスタイルに正直であり続ける
- マネジメントの許容範囲を定めるが、ある程度柔軟に行う
- 規律を持ち、詳細に目を向ける
- 言いたいことすべてを口に出さない
- 人を大切にする
いかがですか?
ジャック・ウェルチ 著「わが経営」に述べられていたリーダーの条件に比べると、随分と変わったことが分かります。本当にとてつもなくグローバルな大企業を変化の中で存続せしめるために、壮大なイマジネーションを持ち、エネルギッシュに行動し、未曽有の変化や経営にとって逆風ともいえる状況の中で組織をけん引してきたリーダーだからこそ言える、実践的・現実的なチェックリストだと思います。
若手、リーダー、経営者の立場を問わず、もし今苦悩しているなら、あるいは自分を見つめなおす時に接しているのであれば、今一度振り返って欲しいと思う項目です。
恥ずかしながら私自身もセルフチェックしてみましたが、自信をもってYESと回答できたのは10項目中6項目だけでした。(ちなみに、ウェルチのチェックリストでも8項目中4項目だけでした。)私も、まだままだ精進が足りません。
GEに入社すれば、入社1か月後にクロトンビルでイメルトに会う機会があるのかもしれませんが、そうでない方にとっては、イメルトの価値観や次世代リーダー像に迫ることができる良書といえます。また、訳者の関 美和さんもイメルトと同じくハーバードビジネススクールのMBAであり、ビジネス観や世界観などが通じるところがあるのでしょう。とても安心して読める素晴らしい訳となっています。
最後に、新世紀のリーダーシップについて、第15章にイメルト自身のコメントが記載されているので、それを引用させていただきます。
「CEOになってみなければ、自分達のおかれている環境や、世界の中の自社の立ち位置を理解することはできない。この仕事を実際にやってみたものでなければ、その真の幅広さを知ることはできない。私はこれを骨身にしみて学んできた。」(ジェフ・イメルト)
著者:デビッド マギー(著),関 美和(翻訳)