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2011年1月

社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由
板倉 雄一郎(著)

今もなおベンチャー経営者のバイブルとされるロングセラー「社長失格」が、板倉さん自身の手によって加筆・修正および当時の秘蔵写真と特典の動画メッセージを伴い、板倉雄一郎事務所から電子出版された。日経BP社発行の「社長失格」(1998年11月)に、著書による一部加筆修正・当時の画像を織り込んだiPhone/iPad版が2010年10月配信開始された。

本書は、なぜベンチャーに夢をもつことができるのか、何をしたら失敗するのか、当時のハイパーネットの経営者や社員達はどのように判断・決定し、行動したのか、その追体験ができるお奨めの書である。

思えば、初版本に板倉さんにサインをしてもらってから、気がつけばすでに12年が経過している。

電子出版も購読したが、12年もの年月が経過したにもかかわらず、稀代のアントレプレナーであった板倉さんがハイパーネットを生み出した後たった2年間で急成長し、絶頂を迎え、そこから急降下破産、そして絶望するまでの過程を、当時の感覚のまま、いきいきと彷彿とさせる。

ベンチャーに関わらない人でも、ビジネスマン全ての方にもそれなりに参考になるかもしれないが、やはり将来起業を考えている人、ベンチャーに転職しようとしている人、成長局面に入ったベンチャー企業家、経営に失敗した全ての経営者に読んで欲しい一冊である。

1997年11月に山一證券の破綻、12月にハイパーネットの破綻、この2つの企業破綻は、ほぼ同時期に起きた。

大手企業とベンチャー企業の違いがあるとはいえ、どちらも、間接金融主体のファイナンスとそれをベースにした経営を行っていた日本企業の終焉であり、直接金融、株式投資や資本政策が重要となってくる時代の夜明けとも言える象徴的な出来事であった。

著書の中でも述べているが、アメリカにもジェリー・カプランという有名なベンチャー企業家の”STARTUP: A Silicon Valley Adventure”という本がある。ハイパーネット創業前に同著書を読んでいるのだが、惜しむらくは、板倉さんがカプラン氏の書から学んでいれば、あるいはハイパーネットの破綻は免れたのでは?と思われることである。

社長失格を読んだ読者は、板倉さんの徹を踏まず、時代の流れを読み解き、大きな組織の論理や経営拡大における落とし穴を事前認識した上で、成功の一助としていただきたい。

また、社長失格の中には書かれていないが、板倉さんが最近ブログやツイッターで盛んに述べておられるのは、「ダウンサイドリスク限定、かつ、アップサイドリスク(が論理的に)無限大のビジネスモデルの優位性が高まる。」ということだ。これはベンチャー経営者の中でも大成功といわれた絶頂と、時代に刻まれるほどの絶望を経験した板倉さんの含蓄ある言葉だと思う。

電子出版のほうではアクシアムが実名で出てくる箇所がある。アクシアムが当時同社の採用を支援していたからだが、私自身も板倉さんやハイパーネットのスタッフの皆さんからは多くのことを学ぶことができた。今更ながら深謝したい。

社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由 出版社:日経BP社
著者:板倉 雄一郎(著)