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転職コラムキャリアに効く一冊
キャリア開発に役立つ書籍を毎月ご紹介しています。
2010年12月
外資系キャリアの出世術 会社があなたに教えない50の秘密
シンシア・シャピロ(著),野津 智子(翻訳)
筆者は、アメリカ企業の大手HRMを長く務めたプロであるゆえに、組織を離れて、HRの裏側を暴露し、HRの怖さを多くの人に知らせている。
内容的には、「日本の大手企業が昔からやっていた怖い一面」の話でもあるし、別の見方をすれば、「最近になって日本企業も外資のように冷酷になってしまったので、皆さん気をつけてね。」というメッセージでもあるかもしれない。ただ、読後に何とも言えない違和感が残ってしまった。
その理由を考えてみたところ、本書の指南するところが「社内で出世したかったら、こうしなさい。これを知らなければ、出世は無理だし、部下の管理もできませんよ。」という極めて限定的なキャリア論となっているからなのだろうと思われた。裏を返せば、会社の枠を超え、社会で広く成功するためにはどうするべきかという議論、本質的に良いキャリアを形成していくためにはどうするべきかというコメントは全く入っていないともいえる。
しかしながら、本書を「キャリアに効く本」として取り上げたのは、91ページのSECRET 10の中にある「優秀さを安全に見せる方法」の部分がとても効果的だと思ったからである。
SECRET 10 賢明すぎるのはあまり賢明でない
「優秀さを安全に見せる方法」
- 方法1:意見は求められた時だけ述べること
- 方法2:あなたの提案を上司が却下したら、その案は打ち捨てること
- 方法3:既になされている取り組みについては、常に敬意と高い評価を示すこと
- 方法4:何らかの改善を提案する時には、上司の手柄となるような提案をすること
「会社があなたの優秀さを欲しいと思うのは、あなたが敬意を示した後のことなのです。」と社内での処し方を述べている箇所があるが、これは企業に応募して、インタビューを受けている時にも通じることである。初対面であるインタビュアー(採用側)に対して敬意をしめさず、横暴にこれ見よがしに自分の優秀さをひけらかすような候補者は、いくら高学歴で実績があっても、採用者側からみれば不要な人材と映るものだ。事前に会社のことを調べておくなどの最低限の準備もせず、「自分は優秀だから認められるはず。スカウトされたのだから自分から売り込む必要なない。」などと思い込んで面談に臨んだのでは、いつまでたっても採用側に評価されない。
読み手の皆さんが、また別の読み方ができるのではと思える書である。
著者:シンシア・シャピロ(著),野津 智子(翻訳)